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📚千石ブッククラブ~100万回生きたねこ~

2021/7/25(日) コラム
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今日のおすすめ絵本

このコーナーでは、千石在住の絵本の大好きなお母さんが子どもの頃に読んだ本、子どもと読んで楽しかった本を少しずつご紹介していきます。

日々の読書にお役立ていただけたら幸いです。

『100万回生きたねこ』(佐野洋子/作・絵、講談社/刊)

100万回生きたねこ

 
今回ご紹介するのは、不朽の名作『100万回生きたねこ』。
作者の佐野洋子さんは日本を代表する絵本作家の一人です。
残念ながら、2011年に亡くなられましたが、生前たくさんの良い絵本を世に送り出しました。
無類のねこ好きとして知られ、ねこが登場する絵本をたくさん描かれましたが、なんといっても代表作はこの作品です。

「あるところに、百万回の生を生きたねこがいました」で始まるこのお話。
ちょっとふてぶてしく見える主人公のねこは、ある時は船乗り、ある時はどろぼう、
またある時はマジシャンやおばあさん、女の子など、色々な人に飼われながら、100万回も生きました。
ねこが死ぬたびに、飼い主は大きな大きな声を出して泣き、悲しみにくれながらねこを土に埋めました。ねこはどんな時も、どの飼い主からも、こよなく愛されていたのです。
ねこは常に誰かのものでした。そして、誰かに可愛がられることが当たり前の生活を送っていました。

ところがある時、野良猫として生まれかわったねこは、初めて誰のものでもない生を獲得します。
誰のものでもない生を生きることができることになったねこは、初めて解放感を味わい、自由を謳歌します。
そして初めて誰かから愛されるのではなく、自分から愛する存在を見つけるのです。
それが、ちょっとすました感じの白いねこ。

いままで百万人の飼い主が自分を愛し、死に涙を流してくれました。でも白いめすねこは、ねこのどんな自慢も「そう」とだけ言って軽く受け流し、振り向く素振りを見せてくれません。 
ねこはようやく、愛することの意味、守べき存在を白いめすねこの中に見い出していきます。
このねこの心情の変化こそ、この物語のクライマックス。
愛されるより、愛することが自分を成長させることを、100万回生きたあとにようやく知ることができたのです。

今回この本を紹介するにあたり、本当に久しぶりにこの絵本を読み返しました。
私が初めて読んだのは中学生の頃だったかと思いますが、二十歳を過ぎてから読んだのと、今回また読み返したのとでは、感じ入る深さが違う様に思いました。
みなさんは、どう感じられるでしょうか?

この本は、歳を重ねるごとに読み返して欲しい一冊です。

『100万回生きたねこ』(佐野 洋子)|講談社BOOK倶楽部 (kodansha.co.jp)

 

 

【案内人 栞本ことは(しおりもと ことは)氏 (千石在住)】 
文庫活動(近所の子どもたちが自由に本が読めるよう、家の玄関先に本棚を置く)や手作り絵本の会(子どもたちが画用紙に文と絵を書き製本をし、世界に一つだけの絵本を作るお手伝い)をしていた母の影響で、自然と絵本や本に親しむようになりました。
本好きが高じて、出版社で編集の仕事をしているのですが、それでもまだ本への愛がおさまらず(?)、子どもが通う小学校で読み聞かせ隊をしたり、本のイベントをしたりしています。

 

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