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📚千石ブッククラブ~まよなかのだいどころ~

2021/3/19(金) コラム
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今日のおすすめ絵本

このコーナーでは、千石在住の絵本の大好きなお母さんが子どもの頃に読んだ本、子どもと読んで楽しかった本を少しずつご紹介していきます。

日々の読書にお役立ていただけたら幸いです。

『まよなかのだいどころ』(モーリス・センダック/作・絵、じんぐうてるお/訳、冨山房/刊)

「たまには外国の絵本を」と思い、真っ先に思い出したのがモーリス・センダックの絵本。

センダックといえば、1964年にアメリカでその年に最もすぐれた絵本に贈られるコルデコット賞を受賞した『かいじゅうたちのいるところ』が有名ですが、『まよなかのだいどころ』も同じく、寝室から想像の翼を大きく広げて、一夜の大冒険に出る小さな男の子のお話です。

この本が我が家に来たのは私が中学生の頃。当時小学生だった妹のために(という体裁で、実は自分が欲しかった)母が買ってきたのがきっかけです。

それ以来私もセンダックに興味を持つようになったのですが、「興味」から「特別な存在」に移行したのは、20代の頃のある体験から。

ある日アメリカで、当時通っていた語学学校に隣接する大学の児童文学の講義に忍び込んだ時のこと。その日のテーマが何かは知らなかったのですが、真っ暗な部屋のスクリーンに映し出された絵が、その緻密さとは裏腹に大迫力で胸に迫ってきたのです。それがセンダックとの鮮烈な再会。暗幕がはられていたのですから、どおりで忍び込みやすかったワケですが、あの時のドキドキは、無断受講への後ろめたさから来るものだけではなかったと思っています。

ところで、主人公のミッキーの大冒険も暗闇からスタートします。

寝室からケーキを作る職人がいる秘密基地みたいな地下の台所までの急降下。

ミルクがないとケーキが作れない! と嘆く職人たちのために、地下から天の川(ミルキーウェイというぐらいですから、良質なミルクが手に入るに違いありません)めがけて急上昇するミッキーの、なんとも誇らしげな顔!

センダックは、黎明期のディズニー映画に強い憧れを持っていたと聞き、主人公のネーミング、あのスター然とした表情は、もしや誰もが知る彼の方へのリスペクトの現れ? などと勝手な想像が膨らみます。

ミッキーの夜空の冒険の背景には、牛乳や小麦粉のパッケージになぞらえた摩天楼が描かれていますが、これはおそらくセンダックが生まれ育ったニューヨーク。

センダックは、ポーランド移民の子どもとしてブルックリンで生まれ育ち、学生時代はロックフェラーセンターに隣接する大きなオモチャ屋さんでバイト。コミックを描いたり、舞台美術を手がけたこともあったようですが、その経験の全てが、この絵本という宝石箱の中でキラキラと輝いている。そんな作品だと感じます。

小学生の妹が、中学生と成人してからの私が楽しんだこの本は、どんな世代でも楽しめる絵本。10歳未満のお子さんももちろん。何しろ保育園だった娘が、「しあげはミルク! しあげはミルク! さあ、できました! ケーキがやけます! これで、いうことありません!」と歌うように暗唱していたのですから。

長くなりましたが、これで、いうことありません!

http://fuzambo.net/sendak.html

【案内人 栞本ことは(しおりもと ことは)氏 (千石在住)】 
文庫活動(近所の子どもたちが自由に本が読めるよう、家の玄関先に本棚を置く)や手作り絵本の会(子どもたちが画用紙に文と絵を書き製本をし、世界に一つだけの絵本を作るお手伝い)をしていた母の影響で、自然と絵本や本に親しむようになりました。
本好きが高じて、出版社で編集の仕事をしているのですが、それでもまだ本への愛がおさまらず(?)、子どもが通う小学校で読み聞かせ隊をしたり、本のイベントをしたりしています。

 

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