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千石のそよ風

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千石さかみち部~第1回 猫又坂 その①~

2021/3/21(日) コラム
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千石にはいくつもの坂道があります。
日ごろ、なにげなく上り下りしている坂道を調べてみると、人々の暮らしや町の歴史が見えてきました。

千石在住の3人が、坂道に刻まれた足跡をさかのぼりながら、意外と知らない千石の街の歴史を紐解きます。

 

「妖怪伝説の地? 猫又橋」  

 

 千石さかみち部の第1回目は、千石三丁目の交差点から不忍通りを上野方面に上る「猫又坂」。
坂道のはじまり、氷川下には千川が流れ、かつて「猫又橋」と呼ばれる石造りの橋が架けられていたんだそう。

 

 

 

 

 

千石三丁目交差点。都バスは上58系統早稲田⇔上野松坂屋行

 

 

 

 

 

大正7年に造成されたアーチ状の猫又橋。写真は完成のお祝いの写真でしょうか? 半纏(はんてん)をまとった男性は職人さんたちのように見えます。大正11年、堂々たる石組みの橋の上を市電が通ります。 

 

 

 

 

 

その後、昭和9年の千川の暗渠化にともない、川は道路の下を流れ、橋も撤去されることに。役目をおえた猫又橋の親柱の袖石が、坂下に保存されています。袖石には、市川虎之助さん(当時の改修工事の相談役)の歌が刻まれています。

「水泳に魚掬(すく)いし千川も地下に流れて見るよしもがな」 

 

                 袖石を眺める部員たち

 

 

 

それにしても、「猫又なんて、愛嬌がある名前だな」と思ったら、猫又とは、「年老いて尾っぽが二股になった猫?狸?の妖怪」のことだそう。江戸時代の書物、『続江戸砂子』には、猫又橋に「夜な夜な赤手ぬぐいをかぶって踊る猫又が出没した」なんて話も出てきますし、江戸の名勝を歌舞伎役者と組み合わせて紹介する『江戸の花名勝会』には、猫又橋の化け猫を南総里見八犬伝の庚申山の怪猫退治に登場する犬村大角を市川市蔵の見立てで描いています。
鋭く爪を立てて火を吹くような猫の姿は、いかにも妖怪っぽいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本来の猫又橋は、のどかな農村風景だったようで、『江戸名所図会』の猫狸(ねこまた)橋の項には、お百姓さんがクワを担いで橋を渡り、女性が川で野菜を洗う姿が描かれています。空には三日月がかかり、ススキが揺れる風景は、今の猫又坂からは想像もつかない情景ですね。

 

と、第一回目は、坂道をのぼることなく終了。
2回目は、「川崎邸のお花見と猫又橋際公衆トイレ」です。

 

 

 

 

 

資料 

国立国会図書館デジタルコレクションより

江戸名所図会、江戸の花名勝会ね九番組 市の川市蔵/巣鴨氷川下猫又橋 

参考文献

『ぶんきょうの坂道』文京ふるさと歴史館刊

『写真で綴る「文の京」』文京区刊

【文と絵 雨宮 みずほ (千石在住)】

趣味は散歩と銭湯めぐり。ライターとして、街歩きや着物を中心に雑誌、新聞等で執筆。「千石の坂道から、街の歴史を再発見したいと思います」。

※文章、イラストの転載はご遠慮ください。

 

 

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